樹脂の円筒タンクでは、塩ビ・アクリルのどちらを採用すべき?

樹脂製の円筒タンクは、薬液貯蔵や実験装置、水処理設備など、幅広い分野で使われています。そんな円筒タンクには主に「塩ビ(PVC)」や「アクリル(PMMA)」といった材質でが活用されています。しかしながら、これらの材質は大きく特性が異なります。本記事では、用途に合わせてどちらを選ぶべきか判断できるよう、それぞれのメリット・デメリットや接合方法を詳しく解説します。

樹脂の円筒タンクでよく用いられる材質

前述の通り、樹脂の円筒タンクで広く採用されるのが 塩ビ(PVC) と アクリル(PMMA) の2種類です。どちらも樹脂でありながら、それぞれに優れた特徴があり、用途や求める性能に応じて使い分けられています。ここでは、両材質の特性や加工性の違いを詳しく見ていきます。

メタフリー円筒タンク

塩ビ(PVC)タンクの特徴

塩ビ(PVC)タンクのメリット・デメリット・接合手順を以下に記述します。

メリット

①耐衝撃性に優れ、割れにくい

②溶接が可能である

③溶接構造により、接合費削減・納期短縮しやすい

④樹脂素材の中でも、材料費が安い

⑤組み合わせる標準品の配管継手が豊富にある

デメリット

①透明度はアクリルより低く、やや青みがかって見える

②耐熱性はアクリルに劣る(耐熱温度:約40℃まで)

③外観品質はアクリルに劣る(ツヤ出しできない、溶接の跡が残る)

塩ビタンクの接合手順(※方法:溶接)

  1. 接合部の開先を切削
  2. 接合部を溶接
  3. 余盛り除去(※強度低下を招くため、用途に応じて実施する)
  4. ペーパーバフ磨き(※外観品質を追い求める場合のみ、実施する)

アクリル(PMMA)タンクの特徴

アクリル(PMMA)タンクのメリット・デメリット・接合手順を以下に記述します。

メリット

①樹脂素材の中でも最高レベルの透明度を誇る

②樹脂素材の中でも最高レベルの外観品質を誇る

③塩ビより耐熱性に優れる(耐熱温度:約70℃まで)

デメリット

①衝撃に弱く、割れや欠けが発生しやすい

②樹脂の中でも材料費が高価である

③溶接ができず、重合接着が必須である

④溶接ができないため、加工コストUP・納期長期化しやすい

⑤アニール処理の行う加熱炉が必要である、製作可能サイズに制限が生じる

⑥標準品の配管継手がなく、特注製作が必要となる

アクリルタンクの接合手順(※方法:重合接着)

  1. 接合面をサンディング
  2. 接合部周辺を養生
  3. 接合部に堤防を設置
  4. 重合用シロップを流し込む
  5. 空気遮断して接合部養生
  6. 数時間〜数十時間かけて硬化
  7. 堤防撤去、養生剥がし
  8. 余盛り除去
  9. ペーパーバフ磨き
  10. アニーリング(※数時間の処理が必要である)

なお、重合接着では、1箇所ずつ接合することしかできないため、2~8を繰り返し実施します。

(※三栄プラテックでは、重合接着剤を入手できなくなったため、重合接着へ対応しておりません。)

樹脂の円筒タンクでは、塩ビ・アクリルのどちらを採用すべき?

項目 塩ビ(PVC)タンク アクリル(PMMA)タンク
透明度 やや青みがあり透明度は低い 樹脂素材トップクラスの透明度
外観品質 アクリルに比べると劣る 非常に高い
耐衝撃性 割れにくく耐衝撃性が高い 衝撃に弱く、割れ・欠けが発生しやすい
耐熱性 約40℃ 約70℃
材料費 比較的安価 高価
接合方法 溶接が可能 溶接不可、重合接着が必須
加工コスト・納期 溶接構造のためコスト抑制・納期短縮につながりやすい 重合接着のため加工コスト増・納期長期化につながりやすい
製作サイズの制限 比較的自由 アニール処理を行う加熱炉を使用するためサイズ制限あり
配管継手の種類 標準品が豊富で組み合わせやすい 標準品がなく特注製作が必要

 

「コストを抑制したい」「短納期で製作したい」「薄肉化したい」なら塩ビ(PVC)を選定!

● コストを抑制したい!

塩ビ(PVC)は、樹脂素材の中でも 材料費が比較的安価です。溶接による接合が可能であるため、加工コストも抑制しやすいです。さらに、標準の配管継手が豊富にあるため、特注部品が不要で、不要な部品コストも抑えやすいです。

  • 短納期で製作したい!

塩ビは溶接による接合が中心のため、加工工程が少なく短納期での製作が可能です。一方でアクリルは重合接着が必要で、硬化やアニーリングなど、多くの工程を要します。

● 薄肉化したい!

塩ビは、割れにくく耐衝撃性が高い上、溶接が可能で設計の自由度が高く、薄肉化しやすいといえます。実際に、同程度の強度を求める場合、アクリルと塩ビでは下記のような形状や板厚の違いが生まれます。

「外観品質を重視したい」「透明度を求めたい」ならアクリル(PMMA)を選定!

● 外観品質を重視したい!

アクリルは磨けばガラスのような光沢が得られ、外観品質に優れています。見栄えを重視したいタンクに適しています。

● 透明度を求めたい!

アクリル(PMMA)は、樹脂素材の中でも 最高レベルの透明性 を誇ります。内部の確認が必要なタンクや、展示用途、視認性を求める機器には最適です。

樹脂タンクの製作なら三栄プラテックにお任せください!

三栄プラテックでは、塩ビをはじめとする各種樹脂タンクの設計・製作に幅広く対応しております。円筒タンク、角タンク、大型タンク、特殊仕様タンクなど、お客様の用途や条件に合わせて最適な材質・構造・加工方法をご提案可能です。「透明度を重視したい」「耐薬品性が必要」「コストを抑えたい」など、用途に応じた最適解をご提供いたします。

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